修繕

大規模修繕の進め方:周期・費用の目安・相見積もりで失敗しない方法

大規模修繕は 12〜15 年ごと、費用は 1 戸あたり 100〜150 万円が目安です。設計監理方式と責任施工方式の違い、相見積もりの取り方、談合やリベートを避ける方法、工事中の住民対応まで、理事会が知っておくべきことをまとめました。

公開 2026/11/08 ・ 更新 2026/11/08読了目安 12 分執筆: ダオマンション編集部

この記事の要点

  • 大規模修繕の周期は 12〜15 年。国交省の調査では 1 戸あたりの費用は 100〜125 万円 の帯が最多で、近年は資材と人件費の上昇で上振れしている。
  • 進め方は 設計監理方式(コンサルタントが設計・監理、施工は別会社)と 責任施工方式(施工会社が設計から一括)の 2 つ。規模が大きいほど設計監理方式が主流。
  • 相見積もりは 同じ仕様書・同じ数量表 で 3〜5 社から取る。見積もりの「一式」表記は内訳を出してもらう。
  • コンサルタントが特定の施工会社からリベートを受け取る問題が実際に起きている。選定の透明性 を確保する仕組みが必要。

大規模修繕とは何をする工事か

大規模修繕は、建物の 外側と共用部分 を計画的にまとめて直す工事です。中心になるのは外壁のタイル補修・塗装、屋上やバルコニーの防水、鉄部の塗装、シーリング(目地)の打ち替えで、足場を組む必要がある工事を一度にやるのが特徴です。足場だけで総工費の 2 割前後を占めるため、「足場を組むついでに全部やる」のが合理的なのです。

周期は 12〜15 年 が一般的です。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインは 12〜15 年の周期を例示しており、近年は材料の耐久性が上がったことから、15 年、場合によっては 18 年周期で計画する管理組合も増えています。周期を延ばせば生涯の修繕回数が減り、総費用を抑えられます。

築0年築5年築10年築15年築20年築25年築30年築35年築40年1回目大規模修繕2回目大規模修繕3回目(給排水管・サッシ等も)機械式駐車場更新エレベーター更新目安: 12〜15 年ごとに大規模修繕。3 回目前後で設備更新が重なり費用が膨らむ
1 回目は外壁・防水が中心。2 回目以降は給排水管やエレベーターなど設備更新が加わり費用が増える

費用の目安

国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、1 戸あたりの工事費は 100 万〜125 万円 の帯が最も多く、75 万〜150 万円に全体の 6 割以上が収まります。㎡単価では 1 万〜1 万 5 千円程度です。ただしこの調査は 2021 年公表で、その後の資材・人件費の上昇で 2 割前後の上振れ を見込んでおくのが現実的です。

大規模修繕の費用イメージ(1 回目、板状マンションの例)
総戸数工事費の目安1 戸あたり
30 戸3,500〜5,000 万円120〜160 万円
60 戸6,500〜9,000 万円110〜150 万円
100 戸1 億〜1.4 億円100〜140 万円
200 戸1.8〜2.6 億円90〜130 万円

小規模なマンションほど 1 戸あたりの負担は重くなります。足場や仮設事務所、現場監督の人件費といった固定費が戸数で割れないためです。タワーマンションはゴンドラ作業や特殊な外装のため、㎡単価がさらに高くなります。

進め方:設計監理方式と責任施工方式

設計監理方式責任施工方式
仕組み設計コンサルタントが調査・設計・施工会社選定の支援・工事監理を行い、施工は別の会社施工会社が調査から設計・施工まで一括で行う
メリット第三者が監理するため品質が担保されやすい。同じ仕様で相見積もりを取れる窓口が一つで手間が少ない。コンサル費がかからない
デメリットコンサルタント費用(工事費の 5〜10%)がかかる。コンサルの質に左右される施工会社の自己チェックになる。見積もりの比較が難しい
向いている規模50 戸以上、工事費 5,000 万円以上小規模、工事範囲が限定的

一定規模以上では設計監理方式が主流です。ただし、コンサルタントが特定の施工会社と結びついて バックマージン(リベート) を受け取り、見積もりを誘導する事案が国土交通省からも注意喚起されています。コンサルタント選びの段階で「施工会社からの金銭の授受がないこと」を契約書に明記し、選定過程を住民に公開することが対策になります。

工事までの流れ(2 年前から始める)

  1. 修繕委員会の設置(着工 24 か月前)。理事会とは別に、任期をまたいで活動できる委員会を作る。
  2. 建物診断(18〜24 か月前)。外壁の打診調査、防水の劣化診断、鉄部の腐食調査。コンサルタントまたは施工会社に依頼。
  3. 修繕の範囲と仕様を決める(12〜18 か月前)。今回やる工事・次回に回す工事を仕分けし、仕様書と数量表を作る。
  4. 施工会社の公募・相見積もり(9〜12 か月前)。3〜5 社に同じ仕様書で見積もり依頼。
  5. ヒアリングと選定(6〜9 か月前)。見積もり内容の質疑、現場代理人との面談、施工実績の確認。
  6. 総会で決議(4〜6 か月前)。工事の実施、施工会社、資金計画(借入を含む)を議案にする。
  7. 工事説明会と着工。工期は 50 戸で 3〜4 か月、100 戸で 4〜6 か月が目安。

相見積もりで失敗しないための 6 つのルール

  • 同じ仕様書・数量表で依頼する。 数量を各社に拾わせると比較できなくなる。
  • 「一式」は内訳を出させる。 足場一式、外壁一式ではなく、㎡数と単価に分解してもらう。
  • 極端に安い見積もりは理由を聞く。 仮設費や諸経費を抜いている、工事範囲を減らしている、ということがある。
  • 現場代理人(現場責任者)に会う。 工事の出来は現場代理人の力量で決まる。
  • 施工実績を見に行く。 同じ施工会社が直近 2〜3 年に手がけたマンションを実際に見る。
  • 保証内容を比べる。 外壁は 5〜10 年、防水は 10 年の保証が標準。保証書を出す主体(施工会社か材料メーカーか)を確認する。

ダオマンションでは、理事会が工事内容を公開して施工会社から見積もりを集め、比較・選定理由・進捗を住民に公開する仕組みを提供しています。選定過程が記録として残るので、「なぜあの会社に決まったのか」という疑問が後から出にくくなります。

工事中の住民対応

大規模修繕は 3〜6 か月間、足場で囲まれ、バルコニーが使えず、騒音と塗料の臭いが続きます。住民の不満を減らすには、着工前の説明会、週単位の工程表の掲示、バルコニーの片づけ依頼を 1 か月前に出す、問い合わせ窓口を一本化する ことが効きます。在宅勤務の人が増えた今、騒音の大きい作業の時間帯を事前に知らせることは特に重要です。

よくある質問

大規模修繕の周期は何年ですか?
12〜15 年が一般的です。国土交通省のガイドラインも 12〜15 年周期を例示しています。近年は材料の耐久性向上を踏まえて 15〜18 年に延ばす管理組合もあり、周期を延ばすと生涯の修繕回数が減って総費用を抑えられます。
大規模修繕の費用は 1 戸あたりいくらですか?
国土交通省の実態調査では 100 万〜125 万円の帯が最多で、75 万〜150 万円に全体の 6 割以上が収まります。近年の資材・人件費の上昇を踏まえると、2 割程度の上振れを見込んでおくと安全です。
積立金が足りない場合、工事を延期できますか?
外壁タイルの剥落や漏水など安全に関わる劣化がなければ、1〜3 年程度の延期は可能です。ただし劣化が進むと補修範囲が広がって費用が増えるため、建物診断で劣化状況を確認したうえで判断してください。不足分を管理組合で借り入れる選択肢もあります。
設計監理方式のコンサルタント費用はいくらですか?
工事費の 5〜10% が相場で、100 戸のマンションなら 500 万〜1,000 万円程度です。極端に安いコンサルタントは施工会社からのリベートで補填している可能性があるため、契約書で金銭授受の禁止を明記してください。

参考資料

この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別のマンションの事情に対する法的・専門的な助言ではありません。金額や制度は公的資料をもとに記載していますが、最新の法令・規約をご確認ください。

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